キャリアコラム

スタートアップ/ベンチャー企業への転職で失敗した実例 ~Aさんのケース~

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このキャリアコラムでは、「スタートアップ/ベンチャー企業」への転職を考えている方に向けて、キャリアデザインの考え方やスタートアップ/ベンチャー企業のリアルな状況、転職成功者の実例、転職活動のノウハウ、転職市場のトピックなどをお伝えしていきます。

第6回目の今回は私が転職エージェントとして多くの候補者の転職活動をサポートしてきた中で、目の当たりにした「スタートアップ/ベンチャー企業」への転職で失敗した実例「Aさんのケース」をご紹介したいと思います。スタートアップ/ベンチャー企業への転職をお考えの方にとって、少しでも参考になれば幸いです。

※事実に基づいた内容ではありますが、個人情報保護の観点から具体的な表現は避けております。

大手企業に在籍しながら、やりがいの無さから転職へ

私が彼と初めて出会ったのは2014年の夏頃で、当時は大手メーカーの関連企業で働いていました。まだ社会人として数年しか経っていない状況でしたが、何億円という大きな商談を取り仕切るような経験をされていました。一方で歴史の長い企業だったため”しがらみ”も多く、思い通りに仕事を進められないことや、ひとつひとつの案件が大きすぎるため自分の存在価値を見出せないことに不満を感じていました。

もうひとつ彼の中では幼少期からの経験に基づいて、興味の高い分野がありました。転職を意識し始めた際に、せっかくならその分野での仕事にチャレンジしたいという想いも同時に湧き上がっていたようです。

書類選考は通過するものの、頑固な性格が災いし…

私はこのような彼の転職理由、チャレンジしたい分野の意向を踏まえて、数社ほどピックアップし、正式に転職活動のサポートがスタートしました。その中には社員数が二桁ほどの当時、成長著しいスタートアップ企業もありました。彼は有名大学を出て、名の知れた企業に在籍しており、まだ20代そこそこということで、いわゆる”第二新卒”クラスの人材としては最適なため、推薦したすべての会社において書類選考を通過しました。

しかしその後の面接では苦労することになりました。私の方でも面接対策はしたのですが、実際の面接では現職のダメなところ、自分がしたいことを述べることが多く、企業側からは「優秀だが、柔軟性に欠け、活躍のイメージが持てない」というようなフィードバックを多くもらいました。転職活動をサポートしていくにつれ、当初の彼の印象とは異なり、一見こちらのアドバイスを聞き入れているようで実際の行動は異なる場面が増え、頑固なところが目につくようになってきました。

転職した数ヶ月後、また次の転職を考えることに

最終的には他の転職エージェントから紹介された、とある有名なインターネット関連の企業に転職しました。しかしその会社はブラック企業で、転職した人がハードワークに耐え切れずにすぐに辞めていくことで業界内では有名な存在でした。私もそういった話は小耳に挟んでいたので、彼に助言はしましたが、彼の気持ちは固まっており、私も彼に内定を辞退させるほどのことはないと思いとどまり、そこで彼への転職活動のサポートは終了しました。

しかし数ヶ月後、彼から連絡があり、再び会うことになりました。最初に連絡をもらった段階では具体的な相談内容などは言っていませんでしたが、私は何となく嫌な予感がしていました。会って最初の頃は現職での実績を誇らしく語っていましたが、案の定、最後の方に転職先のブラックぶりから、既に次の転職を考え始めているという話を切り出してきました。精神的、体力的にもかなり疲弊している様子だったので、休職するのは労働者の権利だから、本当に危ないと思ったら遠慮せずに休んだ方が良い、というアドバイスとともに、短期間で転職を繰り返すと経歴としてマイナスに働くので、もし耐えられるのであれば最低でも1年は頑張った方が良い、とアドバイスしました。

幸いなことに彼は休職することもなく、何とか1年はその会社で頑張り、その後、2回目の転職活動をスタートさせ、複数社からの内定を得ることができました。彼は最終的には内定が出た会社の中から、大手Webメディア企業に転職しました。ただ、他に内定が出た企業はいわゆる名の知れた重厚長大系の大手企業だったため、私は違和感を覚えました。結局、彼は大手企業で安定的にキャリアを積み上げたいのか、ベンチャー企業で揉まれながら成長していきたいのか、自分の中でも結論が出ていなかったと思います。

転職が失敗したポイントは大きく2つ

短期間で転職を繰り返してしまうことが、すべて失敗とは限りません。やむを得ない事情で短期で次の転職をせざるを得ない場合もあります。しかし「石の上にも三年」とはよく言ったもので、やはり転職後はやりがいを感じて、長期間働き続けられることが理想だと思います。

そんな彼との関わり合いの中で感じたのは、転職活動を成功させるためには「自分の中で転職理由の本音と建前を合致させる」、「企業が求めることと自分が求めることを合致させる」の2つが重要だということでした。「自分の中で転職理由の本音と建前を合致させる」ことができないと、いざ転職した後「こんなはずじゃなかった…」、「もっと充実すると思ったのに…」と後悔することになります。

そして「企業が求めることと自分が求めることを合致させる」ことができないと、そもそも面接が通りませんが、それ以上に怖いのはブラック企業に採用されてしまう危険性が高まることです。自分の求めていること(=転職理由)が不明瞭のまま転職活動を続けていると、段々と面接慣れしていき、面接では相手企業の意向に合わせるような発言が増えます。当然、転職活動の短期的な目標は内定であり、内定は出ないより出た方が良いので、自然とそういう思考になってしまうのは避けられません。

一方で会社側に関しては、「人材を価値」と捉えている会社であれば、長期的な就労のためには本人の希望と自社の環境が一致することが大事と認識しているため、本人に様々な質問を投げかけて、意向を深堀りしていきます。そして最終的には転職理由が不明瞭だったり、自社への志望理由が甘かったりした場合、お互いに不幸にならないように不採用とします。しかし人材を「ただの使い捨てのコマ」と考えているブラック企業は、そういった深堀りをせずに、スキルだけを見極めて採用しようとします。皮肉なことにスキルがあるのに「人材を価値」として捉えている企業の内定は出ず、「人材を使い捨てのコマ」と捉えている企業=ブラック企業の内定ばかり出る、ということになってしまいます。

…と、偉そうに分析していますが、私自身の過去の転職活動を振り返っても、まさにこの2つがズレていました。幸運なことに転職した先はブラック企業ではありませんでしたが(苦笑)、自分の求めているものがそこにはなく、転職を繰り返して「キャリアの迷い子」になっていました。考えの浅い自分にとっては、必要な回り道だったのかもしれませんが、こんな回り道はしない方が良いに決まっています。

そのためには「自分の中で転職理由の本音と建前を合致させる」ことと、「企業が求めることと自分が求めることを合致させる」ことです。次回のキャリアコラムでは私が前職のリンクアンドモチベーションで学んだことと、自分の実体験から感じたことを融合して、具体的にこの2点をどう考えれば良いのか、一定の結論をまとめたいと思います。

Attack株式会社
代表取締役 村上篤志

※中途採用をお考えのスタートアップ/ベンチャー企業の採用担当者の方こちら

※スタートアップ/ベンチャー企業への転職をお考えの方こちら

※キャリアウェイク【Career Wake】に掲載されている社長インタビューこちら

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